借地権付き建物は権利関係が複雑であるため、土地と建物両方を所有している場合よりも売却のハードルが上がります。借地権付き建物を所有していて、いざというとき売れるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では借地権付き建物は本当に売れないのか解説し、売却を成功させるためのポイントをご紹介します。借地権付き建物を所有している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
そもそも借地権付き建物とは?
借地権付き建物とは、地主から借りた土地の上に建っている建物を指します。土地は地主の持ち物、建物は自分の持ち物というように、土地と建物の所有者が異なります。
借地権とは、簡単にいうと建物を所有する目的で土地を借りられる権利です。
価格が安いことや土地の固定資産税・都市計画税がかからないことがメリットです。通常の不動産に比べて、購入や所有にかかる費用を節約できるのは魅力的なポイントといえるでしょう。
地上権と賃借権
地上権と賃借権という2つを合わせて、借地権と呼びます。地上権も賃借権も、借地料を支払うことで土地を利用できる点は共通です。
しかし建物の売却や建て替えにおける自由度が違います。地上権は自由に建物の売却や建て替えができる一方、賃借権は地主への許可が必要です。
地上権か賃借権どちらにするかは、土地を借りるときに地主と借地人の間で決めます。ほとんどのケースでは、賃借権が設定されることが多いです。
借地権の種類
借地権は3種類に分類でき、存続期間や更新の可否が異なります。それぞれの特徴をまとめました。
一般定期借地権
存続期間が50年以上と長めに設定されている代わりに、契約の更新ができません。期間満了後は契約が終了し、借地人は建物を解体して更地で返還する必要があります。
借りている土地が定期借地権の場合、存続期間が残りわずかだと売れにくいです。期間満了に伴い自動的に契約が終了するため、利用期間が短くなってしまうからです。
普通借地権
存続期間は30年以上で、契約を更新できます。地主は、正当な事由なしに更新を拒否できません。更新後の存続期間は20年以上、2回目以降は10年以上です。
旧法借地権
大正10年に施行された借地法に基づく権利になります。1992年7月31日以前から土地を借りている場合は、旧法借地権である可能性が高いです。
存続期間は木造20年以上、鉄骨造・鉄筋コンクリート造は30年以上と定められています。契約は更新可能で、建物が建っている間は自動更新されます。地主は正当な理由がなければ、更新を拒否できません。借地人の権利が強く、半永久的に土地を使えます。
借地権付き建物って売れないの?売却できるが安い理由を紹介
借地権付き建物は、地主から許可を得られれば売れます。ただし難易度が高く、安い価格でしか売れない可能性があります。その理由は以下のとおりです。
- 借地料の支払がある
- 建物の建て替えやリフォームのとき地主の許可がいる
- 建物を売却するときに地主の許可がいる
- 銀行からの借入ができないこともある
借地料の支払がある
借地人は地主に対して、借地料を支払わなければなりません。土地は地主の所有物であるためです。
家賃の支払いが嫌でマイホームを買いたい人は、借地料がかかることに抵抗を感じるでしょう。特に老後は勤労収入が減ってしまうため、毎月の出費に負担を感じる人も少なくありません。
建物の建て替えやリフォームのとき地主の許可がいる
建て替えや大規模なリフォームに対して制限を受けます。土地賃貸借契約に増改築禁止特約がある場合は、地主の承諾を得なければなりません。承諾をもらう際は、地主から増改築承諾料を求められるのが一般的です。
小規模なリフォームであれば、承諾不要なケースが多いです。しかしリフォームが小規模か大規模かの判断は人によって分かれます。本当は小規模な工事なのに大規模と勘違いされてはトラブルの元です。大なり小なり工事を実施するときは、その内容を共有しておいたほうが良いでしょう。
地主に無断で工事をおこなうと契約違反とみなされ、契約解除となってしまう恐れがあります。自分の家なのに好きなように建て替えやリフォームすることが許されず、不便さを感じる買主は少なくありません。
建物を売却するときに地主の許可がいる
建物を売るときも地主の許可を得ることが不可欠です。無断で売ってしまうと、契約解除となり土地を返還しなければなりません。
また地主に承諾をもらう際に、譲渡承諾料の支払いを求められることが多いです。譲渡承諾料の相場は、借地権価格の10%程度といわれています。
銀行からの借入ができないこともある
住宅ローンの審査に通りにくく、銀行からの借り入れができないこともあります。
土地は地主名義であるため、銀行は建物にしか抵当権を設定できません。建物のみでは担保価値が低下することから、多くの銀行は住宅ローン融資を敬遠してしまうのです。
住宅ローンを利用できないことは買主にとって大きな障害となるため、売却が困難になることが予想されます。
基本的な借地権付き建物の売却方法
売却方法は、以下のとおりです。
- 第三者に売却
- 地主に売却
- 地主から底地権を買い取り売却
それぞれの方法を詳しく見ていきましょう。
第三者に売却
一つ目は、第三者に売却する方法です。この場合は先述のとおり、地主の許可を得て譲渡承諾料を支払う必要があります。
地主に売却
二つ目は、地主に売却する方法です。借地権を買い取れば、土地の権利が戻ってきて完全な所有権になります。土地を自由に使えて資産価値も高まるため、買い取りに応じてくれる可能性があります。
ただ安定した借地料を得ることを望んでいる地主も少なくありません。その場合は買い取りを打診しても、断られる可能性があります。
地主から底地権を買い取り売却
地主の持つ底地権を買い取り、土地と建物両方の所有権を持った状態で売却します。底地権を買い取らずに、地主と協力して第三者に買い取ってもらうのも一つの手です。
地主が税金の負担を重く感じている場合や、借地料の利益が出ていない場合には、協力してくれる可能性があります。
完全な所有権であれば建て替えやリフォームで制限を受けることもありません。土地と建物を好きなように使えるため、購入検討者が集まりやすくなるでしょう。
借地権付き建物を売りたいときの手順
借地権付き建物を売るときは、以下の手順で進めます。
- 不動産会社を見つけ契約
- 地主から許可をもらう
- 売却方法を決める
- 売却活動
- 決済と引き渡し
それぞれの手順でやるべきことを解説します。
不動産会社を見つけ契約
まずは仲介を依頼する不動産会社を複数社ピックアップします。借地権付き建物の売却は専門性が高いため、類似物件の売却経験や交渉力の強さを軸に選ぶのがポイントです。
会社をピックアップしたら、売却について相談し、物件を査定してもらいます。査定結果や担当者の対応などを総合的に判断し、媒介契約を結ぶ会社を決めます。
地主から許可をもらう
地主に事情を相談し、売却の許可をもらいます。関係性にもよりますが、不動産会社の担当者をとおして交渉したほうがスムーズに進むことが多いです。
売却方法を決める
先ほど紹介したように3つの売却方法がありますが、いずれも地主なしには前に進められません。さまざまな事情を鑑み、どの方法で進めるのが最適なのか決めましょう。
売却活動
物件の強みを効果的にアピールできると、多くの購入検討者を惹きつけられます。たとえば価格の安さは、ぜひ伝えたいアピールポイントです。
売却活動の方法は、インターネット広告やチラシ、住宅情報誌などさまざまです。売主の事情や物件の特性にあった方法で売却活動をおこないましょう。
売買契約締結
買主が現れたら、価格や引き渡し時期の交渉をおこない、合意できれば売買契約を結びます。第三者に売却する場合は売買契約時に地主から承諾書もらう必要があるため、事前に準備が必要です。
また買主と地主の間で、借地権に関する重要事項を確認することも欠かせません。たとえば借地料や借地期間などは、事前に確認しておきたいポイントです。
決済と引き渡し
売買契約締結後、住宅ローン審査が下りるまでに1〜2カ月待つことが多いです。無事にローン審査が下りれば、代金の決済と引き渡しをおこないます。
決済・引き渡しと同日に、建物の所有権移転登記も申請します。登記申請は自分でもできますが、ミスを防ぐためには司法書士に依頼したほうが安心です。
借地権付き建物!売却を成功させるポイント
借地権付き建物の場合、地主との交渉が売却成功の鍵を握っています。当事者間同士の直接交渉は難航することも少なくありません。不動産会社を通したほうが円滑に進められるでしょう。
通常の取引と比べて特殊であるため、取引実績や担当者の交渉力をよく見極めることが重要です。
もし地主から許可を得られないときの対処法
借地人は借地非訟裁判を利用して、地主の代わりに裁判所から代諾許可をもらうことが可能です。
しかし借地非訟裁判には時間を要します。通常の訴訟より審理期間は短いものの、結論が出るまでに6ヶ月程度はかかるでしょう。
また弁護士の協力も必要になるため、費用がかかる点に注意が必要です。地主との関係悪化も懸念されることから、慎重な判断が求められます。
【まとめ】
借地権付き建物は建物と土地の所有者がバラバラです。売却や建て替えのハードルが高いことから、購入検討者から敬遠されてしまう傾向があります。
借地権付き建物の売却手段は複数ありますが、いずれにせよ地主との交渉が成否を分けます。まずは信頼できる不動産会社に相談し、スムーズに売却を進めるための戦略を練りましょう。