気に入った不動産を見つけたとき、買主は売主に対する意思表示として、購入申し込みをすることが可能です。しかし、購入申し込みには法的拘束力がなく、キャンセルされてしまう可能性もあります。
本記事では、不動産購入の申し込みキャンセル率について解説します。キャンセルされる理由や対処法についても紹介しているため、これから不動産を売却しようとしている方は必見です。
目次
購入申し込みについて

購入申し込みとは、買主が「この物件を購入したい」という意志を売主に伝える重要なステップです。購入申し込みの際は、購入申込書や買付証明書といった書面を提出するのが一般的です。これらの書面には、買主の情報や買付価格が記載されているため、売主が買主を決めるための判断材料にもなります。
購入申し込みのタイミングは、多くの場合、物件の内見後です。気に入った物件を押さえる意味合いはあるものの、法的拘束力はないため、同じ物件に複数の購入申し込みが入ることもあります。
買主は購入申込書を出した後に、住宅ローンの事前審査を受けます。そして、事前審査に通過し、売主と条件合意できれば、晴れて不動産売買契約の締結に進むことができます。このように、購入申し込みは、不動産売買の出発点として非常に重要な役割を担っているのです。
不動産購入の申し込みをキャンセルする理由とは?

購入申し込みは、不動産売買に向けた大きな第一歩。不動産売却を進めている売主にとって、購入申し込みが入ることは嬉しいものです。しかし、一度購入申し込みが入ったからといって、必ず契約に至るとは限りません。実際には、途中でキャンセルされるケースもあるのです。
キャンセルする背景には、買主のさまざまな事情や気持ちの揺らぎがあります。主な理由は、以下のとおりです。
- 資金面での悩み
- 物件の不安
- 他の物件が魅力的
- 家族からの反対
- ローンの審査が通らない
購入申し込みは法的拘束力がないため、気軽に提出できるものです。その分、買主の少しの迷いがキャンセルにつながることも。
ここからは、それぞれのキャンセル理由について詳しく解説します。
資金面での悩み
不動産の購入は、人生の中でも指折りの大きな買い物です。そのため、購入申し込みをした後で「本当に支払えるのか」と不安になり、キャンセルに至るケースは少なくありません。
具体的には、以下のような理由が挙げられます。
「自分の収入に対して、物件価格が高すぎる」
「ローンの返済額を試算したら、購入後の生活が苦しくなりそう」
「子どもの教育費など、将来の支出を見落としていた」
資金面の悩みは、購入申し込み後に現実的な試算を始めたことで浮かび上がることが多く、結果としてキャンセルにつながってしまうのです。
物件の不安
物件に対して不安を感じ、キャンセルとなることもあります。多くの買主は購入した物件での長期的な生活を想定しており、快適に住み続けられるかどうかは重要なポイントです。また、将来的に売却する可能性も見据え、資産価値や売却のしやすさを重視する方も多いです。
たとえば、築年数が古く老朽化が進んでいる物件や、周辺の騒音・治安に懸念がある物件は、購入後の生活に不安を感じやすくなります。さらに、再建築不可や接道義務を満たしていないなど、法令上の制限がある物件は、「将来的に売却しにくいだろう」と敬遠される傾向があります。
こうした不安は、購入申し込みを出してから、物件の詳細を調べるうちに顕在化することが多いです。買主としては後悔のない選択をしたいため、購入申し込み後であっても、キャンセルを選ぶことがあります。キャンセルを減らすためには、内見時に物件の懸念点も含めて丁寧に説明することが重要です。
他の物件が魅力的
購入申し込みをした後で、他に魅力的な物件に乗り換えることは珍しくありません。たとえば、同じような条件で低価格の物件や、同価格帯でも立地や設備が優れている物件は、買主にとって魅力的な選択肢になります。
「より良い条件の物件を、少しでも安く買いたい」というのが、多くの買主に共通する心理です。購入申し込みを取り下げても、キャンセル料が発生しない場合「乗り換えたほうが得だ」と考えるのは自然の流れといえます。
こうした事態を防ぐためには、あらかじめ競合物件の情報を把握しておくことが大切です。そして、自分の物件と比較されたときに、どのような点に優位性があるか伝えられるようにしておきましょう。買主が他物件と迷ったときに、納得感を持って選んでもらえるようにすれば、キャンセルの抑止につながります。
家族からの反対
家族に反対されて、購入申し込みをキャンセルしてしまうケースもあります。特に、一人で内見を済ませて、そのまま購入申し込みをしてしまうと、このような事態が起こりやすくなります。
たとえば、旦那さんにとっては理想的な物件でも、奥さんにとっては「騒音が気になる」「キッチンの使い勝手が悪い」など、生活面での不満が出ることも。このように、普段一緒に暮らす家族でも、物件に求める条件や価値観はそれぞれ異なるものです。
購入した後は、家族全員がその物件で暮らすことになるため、事前の同意は欠かせません。家族で住む予定がある場合は、内見の段階から全員で物件を確認し、納得したうえで購入申し込みをしてもらうほうが無難です。
もし一人で申し込みをして、後日家族が物件を見に来る場合は、意見の食い違いによるキャンセルのリスクが高まるため、慎重な対応が求められます。
ローンの審査が通らない
ローンの審査に通らず、購入申し込みが白紙に戻ることもあります。たとえ購入の意志があっても、ローンの審査に通らなければ物件を購入することはできません。
買主は購入申し込みの後に、金融機関の事前審査を受けます。その際、収入など返済能力に問題があると判断されれば、審査を通過することはできません。買主自身の返済能力に問題がなくても、再建築不可や接道義務を満たさないなど、物件の条件が原因で審査に落ちることもあります。
審査基準は金融機関によって異なるため、一つの金融機関で審査に通らなくても、他の金融機関では通過する可能性があります。ただ、審査に落ちたという事実が、買主に資金面の不安を与え、「やはり購入は見送ろう」とキャンセルにつながることもあります。
不動産の購入申し込みキャンセル率について

購入申し込みのキャンセル率は公式に公表されていませんが、一般的には約1割〜1.5割程度といわれています。つまり、10件の申し込みがあれば、1件以上はキャンセルになる可能性があるということ。不動産を売却する立場からすれば、決して他人事とはいえない数字だと思います。
しかし、すべての物件が一様に1割〜1.5割のキャンセル率というわけではありません。キャンセルされやすい物件とそうでない物件があり、その差は大きく開いています。
キャンセルされやすいのは、物件情報が不十分、築年数が古い、立地に課題があるなど、買主にとって懸念材料がある物件です。逆に、築浅で立地条件が良く、内見時に物件の懸念点を丁寧に伝えている場合は、買主の納得感が高まるため、キャンセル率も低くなるでしょう。
売却を成功させるためには、物件の魅力だけでなく、誠実な対応も重要です。情報の透明性を高めることが、買主との信頼関係を築く鍵となります。
購入申し込み後キャンセルになったときの対処法

もし購入申し込み後にキャンセルが発生すると、売買の話は振り出しに戻り、売主としては精神的にも時間的にも、大きな負担となります。「買主へ何かペナルティを請求できないのか」と疑問を持つ方も少なくないでしょう。
購入申し込みには、基本的に法的拘束力がありません。そのため、買主にペナルティを請求するのは難しいのが現実です。
ただし、キャンセルが起きたタイミングによっては、ペナルティを請求できることも。ここからは以下の3つのタイミングに分けて、ペナルティの有無や適切な対処法について詳しく解説します。
- 売買契約前の場合
- 売買契約後の場合
- 契約後のローン不承認の場合
売買契約前の場合
売買契約を結ぶ前にキャンセルしてきた場合は、残念ながらペナルティを請求することはできません。購入申込書はあくまで「購入の意思表示」であり、法的な拘束力がないためです。
この段階で売主ができることは、まず買主からキャンセルの理由を聞くことです。解消できそうな理由であれば、条件の見直しや再交渉をおこない、売買の再開につなげることも可能です。
売買契約後の場合
売買契約を締結した後に、買主がキャンセルを申し出た場合は、契約違反とみなされる可能性があります。この場合は、契約に記載された「違約金」や「手付金の放棄・返還義務」などの条項に基づき、対処します。
違約金と手付金の相場は、以下のとおりです。
違約金:売買金額の10%〜20%
手付金:売買金額の5%~10%
契約後のローン不承認の場合
売買契約後にローンの本審査が不承認になった場合は、ローン特約が適用されるかどうかが重要なポイントです。それによって、ペナルティの請求可否が決まります。ローン特約とは、本審査に通らなかった場合に、契約を無条件で白紙に戻すことができる条項です。
この特約が契約書に盛り込まれている場合、買主は違約金なしで契約を解除できます。そのため、売主からペナルティを請求することはできません。
一方で、特約がない場合や、買主の書類不備や虚偽申告が原因で審査に落ちた場合は、違約金の請求が認められる可能性があります。
不動産購入の申し込みをキャンセルされにくくする方法

不動産を売却する場合、購入申し込みのキャンセルはできるだけ避けたいものですよね。売主の心がけによって、購入申し込みのキャンセル率を下げることは可能です。ここからは、キャンセルを防ぐために有効な方法について、以下のとおり解説します。
- 買主への真摯な対応や説明
- 時間的な余裕での売却活動
- 購入意思のある顧客の確保
- 安心して任せる不動産業者に依頼
買主への真摯な対応や説明
購入申し込みのキャンセルを防ぐためには、買主との信頼関係の構築が欠かせません。物件の良い面だけでなく、懸念点まで包み隠さず説明することで、買主は安心して判断できます。
たとえば築年数や周辺環境に関する質問には誠実に答え、生活のイメージを具体的に伝えることが重要です。売主の対応が誠実であれば、申し込み後の迷いや不安が減ります。
時間的な余裕での売却活動
時間的な余裕を持つことも、キャンセル率低下につながります。売却を急ぎすぎると、買主も急かされてしまい、冷静な判断ができないまま申し込みをしてしまう可能性があります。
結果的に資金面や物件に対する不安、家族の反対などが浮き彫りになり、キャンセルにつながるケースも。余裕を持って内見日程を調整したり、複数回の見学を許容したりすることで、買主は納得感を持って意思決定できるようになります。
購入意思のある顧客の確保
購入申し込みが入ったとしても、契約に至るまでにキャンセルが発生するリスクは常にあります。こうした事態に備えて、二番手・三番手の申し込み者を確保しておけば、売却活動を停滞させずに次の交渉に移ることができます。
人気エリアや条件の良い物件では、複数の申し込み者が現れることが多いです。購入の意志がある顧客に対しては、真摯に情報提供をおこない、安心感を与えることが重要です。そうすることで、次点の候補者として前向きな姿勢を維持してもらうことができます。
安心して任せる不動産業者に依頼
信頼のおける不動産業者に依頼することは、キャンセルを防ぐうえで何より重要です。中には、買主に購入申し込みを急かしたり、物件の良い面だけを強調したりする業者も少なくないからです。このような対応は買主の迷いや不安につながりやすく、結果的にキャンセルのリスクを高める要因となり得ます。
一方で物件のメリット・デメリットを丁寧に説明し、買主の資金状況や購入意欲を的確に見極めてくれる業者であれば、安心して売却を任せられます。買主が納得したうえで申し込みすれば、無駄なキャンセルを防ぐことができるでしょう。
まとめ
購入申し込みは、買主が売主に対して「この物件を購入したい」という意志表示をするものです。しかし、法的な拘束力がないため、買主の迷いや不安が原因でキャンセルされてしまうことがあります。
こうした事態を防ぐには、物件のメリット・デメリットを包み隠さず説明することや、買主の購入意志を的確に判断することが肝心です。売主自身の誠実な対応と信頼できる不動産会社選びが、売却をスムーズに進める鍵となるでしょう。



























