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現在わが国では高齢化を背景に空家が増えており、社会問題となっています。このような状況を考慮して制定されたのが、空家等対策特別措置法です。令和5年には一部を改正する法律が施行され、空家対策がよりいっそう強化されました。
この記事では空家等対策特別措置法とはどんな法律か、令和5年の改正内容も踏まえてわかりやすく解説します。空家を所有している方や実家が空家になっている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
そもそも空家等対策特別措置法とは?をわかりやすく解説
空家等対策特別措置法とは、空家の活用促進を目的とした法律です。正式名称を「空家等対策の推進に関する特別措置法」といい、平成26年に制定されました。
この法律で定義されている空家とは、長期間人が居住していない建物とその敷地を指します。空家のなかでも特に問題があるものは、特定空家に指定されます。
特定空家に指定されることは、所有者にとって大きなデメリットです。自治体から勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が受けられなくなります。さらに命令を受けると50万円以下の過料が科せられ、最終的には行政代執行で取り壊されてしまいます。
令和5年に空家等対策特別措置法が改正!改正された内容とは?
令和5年に、空家等対策特別措置法の一部を改正する法律が施行されました。おもな改正内容は、以下のとおりです。
- 空家の活用拡大
- 管理不全空家の指導や勧告
- 特定空家への勧告や命令
それぞれの改正内容について、詳しく見ていきましょう。
空家の活用拡大
中心市街地などのエリアで空家が発生すると、地域の持つ本来の機能が低下してしまう恐れがあります。令和5年の改正では、市区町村が空家等活用促進区域を指定し、空家の活用指針を定めることができるようになりました。
区域内では建築基準法の規制を緩和することが可能です。たとえば建築基準法では接道義務というものがあり、敷地が幅員4m以上の道路に2m以上接していないと建て替えができません。しかし区域内では接道義務による規制が緩和される可能性があります。
区域内では建物の種類を制限する用途規制が合理化される点も特筆すべきポイントです。このように空家等活用促進区域を指定することで、空家の建て替えや用途変更が進むことが期待されます。
管理不全空家の指導や勧告
改正法では特定空家という区分に加えて、管理不全空家という新たな区分が設けられました。管理不全空家とは、適切な管理がされておらず放置すれば特定空家になってしまいそうな空家のことです。
市区町村は管理不全空家の所有者に対しても、指導・勧告をおこなえます。勧告を受けた管理不全空家は、特定空家と同様に固定資産税の住宅用地特例が適用されません。
また所有者把握も円滑におこなえるように改正されています。具体的にいうと、市区町村が電力会社やガス会社に対して、空家の所有者に関する情報を求めることが可能になりました。
特定空家への勧告や命令
緊急時には特定空家に対して勧告や命令の手続きをとらなくても、強制撤去(行政代執行)をすることが可能になりました。たとえば台風が近づいているときなどに、倒壊しそうな特定空家を迅速に撤去することで、周辺地域の安全を確保できるようになります。
さらに所有者不明の空家に対して、市区町村が財産管理人の選任を請求できるようになりました。以前は財産管理人の選任請求は利害関係人しかできませんでしたが、市区町村が介入することで財産管理の円滑化を図れます。
特定空家に指定されないための方法
特定空家に指定され勧告を受けると、固定資産税の負担が重くなります。さらに代執行までおこなわれると、解体費用なども支払わなくてはなりません。特定空家に指定されないための方法は、以下の2つが挙げられます。
- 空家を売却する
- 空家を活用する
空家を売却する
空家を活用できていないのであれば、早めに売却するのがおすすめです。方法としては、中古住宅付き土地として売却する方法と、更地で売却する方法があります。
中古住宅付き土地として売却する方法は、空家を解体する手間がかかりません。一方で買主が空家の解体費用を負担することになるため、売却価格は安くなることが多いです。時間やお金をかけずに売りたい方に向いています。
空家を解体して更地で売却する方法は、中古住宅付き土地よりも早く高く売却しやすいです。ただし空家を解体すると、固定資産税の住宅用地特例が受けられなくなります。解体してから売却するまでの期間、土地の固定資産税が増える点に注意しましょう。
空家を活用する
リフォームを施して、空家を活用するのも手です。活用方法は、自宅として利用する方法や、賃貸物件として貸し出す方法があります。
自宅として利用する方法は、空家を手放したくない方におすすめです。特に実家が空家になっている場合「たくさんの思い出があるから売りづらい」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。この方法であれば、大切な実家を家族で住み継いでいくことも可能です。
賃貸物件として貸し出す方法は、家賃収入を得られるのがメリットです。駅から近いなど好立地に立つ空家であれば、高い家賃収入が見込めるでしょう。また入居者が建物を管理してくれるため、所有者の負担軽減も期待できます。
住宅とは異なる用途に変更して、貸し出すケースも増えています。変更する用途の例を挙げると、グループホームやレンタルスペース、シェアハウスなどさまざまです。立地に合った用途に変更することが、成功の鍵になります。
特定空家の対象になる場合!どんな状態のとき?
特定空家と判定される状態は、以下の4つです。
- 空家が倒壊してしまう可能性がある場合
- 空家が不衛生な状態の場合
- 外観が損なっている場合
- 周辺住民等に悪影響がある場合
次の項目からはそれぞれの条件を具体的な例を挙げながら解説します。
空家が倒壊してしまう可能性がある場合
建物が倒壊しそうな場合、特定空家に指定される可能性があります。
たとえば建物が傾いている場合です。基礎の破損や地盤の一部沈下によって、建物の傾きが見られることがあります。
主要構造部に腐朽や破損が見られる場合も要注意です。シロアリ被害を受けて構造材がもろくなると、倒壊の危険性が高まります。
屋根・外壁が剥がれて飛散しそうな場合も特定空家とみなされる可能性があります。このほか、門や看板など建物に附属する構造物にも気を配らなければなりません。
空家が不衛生な状態の場合
建物・設備の破損またはゴミの放置・不法投棄が原因で、不衛生になっている状態を指します。
具体例を挙げると、浄化槽が破損して汚物が流出しているケースなどです。このほかアスベストが飛散して、健康被害が発生しそうなケースなども該当します。
ゴミの放置・不法投棄によって臭気が発生している状態も、地域住民の日常生活に支障が出ます。不衛生な環境下では害獣(ネズミなど)や害虫(ハエ、蚊など)が一気に繁殖するリスクが高まるため、スピーディーに対処することが肝心です。
外観が損なっている場合
空家が適切に管理されていないことが原因で、景観を損なっている状態が該当します。
景観法や地域条例で定められたルールに適合していないと、景観を損なっている状態と判断される可能性が高いです。
このほか周辺の景観と著しく調和していないケースも含まれます。たとえば外壁が落書きされている、敷地内にゴミが山積しているなどです。外観が損なわれていると、不法投棄を誘発するなど、さらなる環境の悪化が懸念されます。
周辺住民等に悪影響がある場合
保安・衛生・景観以外にも周辺住民の生活環境に悪影響を及ぼしているケースがあります。
たとえば立木が原因で周辺住民に迷惑をかけているケースです。敷地内の立木が腐朽して道路に大量の枝が散乱していると、交通の妨げになります。立木の枝が道路に大きくはみ出している状態もトラブルの元です。
空家に動物が住みついてしまった場合も、地域住民の生活に支障をきたします。野良猫の鳴き声がうるさかったり、ネズミが繁殖して近隣の家に侵入したりすると、地域住民が快適に暮らすことはできません。
ほかには空家の施錠を怠ったために、不審者が侵入してしまうケースです。そのまま寝泊りを続けて住みつき、犯罪の温床になったという事例も報告されています。放火による火災にも十分注意しなければなりません。
特定空家に認定(空家等対策特別措置法)された場合の罰則
特定空家に認定された場合、市区町村から以下の順番で改善が促されます。
- 助言・指導
- 勧告
- 命令
- 行政代執行
改善が見られない場合は罰則が科されるため、早めに対応することが大切です。
助言・指導
市民相談などによって適切に管理されていない空家があるとわかれば、敷地内に立ち入って現地調査をおこないます。あわせて実施されるのが、所有者に関する調査です。所有者を特定し、なぜ空家になっているのか事情を把握し、状況に応じた解決策が検討されます。
これらの調査結果を踏まえて特定空家と判定された場合、市区町村から最初に受けるのが助言または指導です。口頭や電話で通知されるケースもあれば、書面が届くケースもあります。助言・指導の段階では、所有者に対して罰則はありません。
勧告
助言・指導から改善が見られない場合は、勧告がおこなわれます。具体的には一定の猶予期間を設けて、必要な措置をとるよう勧告します。勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例から除外されるため注意が必要です。
勧告は書面によって所有者全員に通知されます。書面に記載されているのは以下の項目です。
- 勧告に関する措置内容とその理由
- 勧告の責任者
- 措置の期限
勧告に従い所有者が適切な措置を講じれば、勧告は撤回されます。一方で勧告に従わなかった場合は再度勧告もしくは命令を受ける流れです。
命令
正当な理由がないのに必要な措置がとられない場合、市区町村は所有者に対して命令を下すことができます。「金銭的な理由で空家を管理できない」のは、正当な理由とはなりません。
命令は書面で通知され、以下の項目が明示されています。
- 命令に関する措置内容とその理由
- 命令の責任者
- 措置の期限
命令に従わない場合の罰則は、50万円以下の過料です。さらに現地に標識が設置され、特定空家であることが公示されます。
行政代執行
命令を無視する悪質な所有者に対しては、最終手段として行政代執行がおこなわれます。行政代執行とは、所有者に変わり行政が建物の解体をおこない、解体費用を所有者に請求するものです。
行政代執行による解体費用は、通常よりも高額になる可能性があります。所有者が解体工事を手配する場合と違い、行政代執行では複数の解体事業者に相見積もりをとるようなことはしません。
費用が支払われないと、所有する不動産を差し押さえられ、競売によって強制的に費用が徴収されることになります。大切な財産を奪われないためにも、行政代執行になるような事態は避けなければなりません。
特定空家!解体する場合に補助金が出る場合もある
空家対策に使える補助金制度を設けている自治体もあります。制度の詳細を知るためには、空家の所在する自治体のホームページを見たり、インターネット検索で「空家 補助金 〇〇市」と調べたりしてみましょう。
一例を挙げると、東京都墨田区では「老朽危険家屋除却費等制度」という制度があります。区が物件の不良度を判定し不良住宅に該当すれば、解体費用の2分の1、上限50万円まで助成する制度です。
解体だけではなく、改修に対する補助金を設けている自治体もあります。たとえば東京都文京区の「空家等利活用事業」は、空家所有者と空家の利活用希望者をマッチングして、成約すれば最大200万円の改修費用を補助する仕組みです。
まとめ
空家等対策特別措置法は空家の利用促進を目的として制定されました。令和5年の改正によって、行政は空家の所有者に対して以前よりも強く改善を求められるようになっています。
地域住民の生活環境に深刻な問題をおよぼす空家は、特定空家に指定される可能性があります。特定空家の所有者にはさまざまな罰則が科されるため、指定される前に手を打つことが大切です。
空家の活用方法を見いだせれば、特定空家に指定される事態は避けられます。売却・賃貸・リノベーションなど、自分たちに合った活用方法を考えてみてはいかがでしょうか。